日本が不況に陥っている原因はデフレではない。イノベーションの停滞が原因だ。とはいえ、一人ひとりの努力でイノベーションを起こすのは難しそうだ。企業がイノベーションを抱え込まず、外部のリソースを使って新しい価値を生み出す方法があるそうだ。これを「オープン・イノベーション」と呼ぶ。
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日本の景気が悪くなった理由ははっきりしている。それはこの国の基幹産業だった「製造業」が優位性を失ったからだ。優位性を失った理由もはっきりしている。中国やインドのような「新興国」と呼ばれる国がこの分野に参入したからである。賃金が安かったというのもあるが、賃金が同程度になっても20億人のライバルがいきなり増えたという事実には変わりない。原因がはっきりしているのだから、対応策も割合とはっきりしている。製造業を脱却して金融やITといった産業に移行するか、製造業でも新興国が参入していない分野(例えば、綿織物ではなく、ハイテク水着のような高度な知識が必要な繊維)に移行することだ。

デフレに苦しむ日本の製造業

さて、にもかかわらずどうして日本は不況に苦しんでいるのだろうか?というのが今日の課題だ。最近注目しているこのブログを見ると、カジュアルウェアの会社がほとんど投げ売りに近い安売りに入っている。これはその産業が衰退期に入り、淘汰の時代を迎えていることを意味する。こういう状態では1位か2位でなければ生き残れない。安売り競争は下位の業者が潰れるまで続くからだ。同じようなことは百貨店でも起きている。合併が進み、最終的には2社+鉄道系くらいしか残らないのではとささやかれているそうである。

雇用を確保したいのであれば、見込みがありそうな分野に進出する必要があるのだが、どうも日本人は「今いるところをがんばって死守しよう」という美学のようなものがあるみたいだ。その上「デフレ」である。デフレは貨幣価値が上がり物価が下がる状態なのだが、どういう理由でそうなったのかは分からない。コメント欄ではこれを説明しようとしたのだが、玉砕した。途中でどうでもよくなってしまったのだ。

その上「悪いものは見たくない」というバイアスも働いている。何も考えずにこういうことを発言するのは良いのだが、この方の場合、試行錯誤を重ね、野口悠紀夫さんのウェブなどを読んで努力をした結果、デフレは10,000円でジーンズしか買えなかったのが、10,000円でジーンズとTシャツとベストを買えるようになることだと結論づけている。確かにこれは本当だ。もし、我々の収入が一定であれば…。収入も物価も下がってゆくのがデフレなので、デフレでも大丈夫ということにはならない。

ここで重要なのは「この議論が間違っている」ということではない。あふれかえる知識に認知上のバイアス(正常性バイアスという)が加わることで「きっと大丈夫だろう」という認識が生まれてしまう。

経済環境はコントロールできない

企業にとって、デフレのような外的環境はあまり重要ではない。それは企業の力ではコントロールできないからだ。重要なのはこうした環境化で何ができるかである。デフレの原因の一つは「日本の製造業が付加価値を生み出す努力をしてこなかった」ことがある。ひらたく言えば「イノベーション」だが、イノベーションが起こらないことが競争力を低下させる一因になっている。

企業の使命はイノベーションである

こうした中、Harvard Business Review ( ハーバード・ビジネス・レビュー ) 2010年 04月号 [雑誌]は製造業の使命はイノベーションであると宣言している。これが今月号のタイトルなのだ。

繰り返しになるが、業績不振はデフレが原因なのかもしれないが、これは一企業がどうにかできるものではない。しかしイノベーションは企業の力で推進することが可能だ。しかしイノベーションというと「アメリカのシリコンバレーあたりのハイテク企業」がやる事であり、アパレルや繊維産業のような人たちが対処できるものではないと感じてしまうのかもしれない。

一人でできなければ、協力する。オープンイノベーション

アメリカの企業であっても、一社でイノベーションを推進するのは難しくなっているようだ。研究開発の絞り込まざるを得ず、有益かもしれないイノベーションの種がだめになってしまう。それを活用するために、外部の力を利用しようとするのが「インサイド・アウト型のオープン・イノベーション」だそうだ。この記事にはいくつかのパターンが掲載されている。一つは自分たちが持っていた技術を外部に解放するやり方だ。また、研究開発を分社すやり方もある。この他にネットの向こうにいる無数の人たちの力を借りるという方法もあり、これを「クラウドソース」と呼んでいる。

一社では解決できなくても「生態系」を作る事によりイノベーションを推進することもできる。ある会社はアイディアの元になりそうな「アイディアの種」を持っている。しかし一社だけではこれをどう使っていいかは分からない。別の会社には「ニーズ」がある。アイディアの種がいくつかつながり、お金になりそうなニーズとつながることによって、アイディアがイノベーションにつながるわけだ。

さて、「日本を元気にする」という視点ではなく「われわれを元気にする」という視点で、最初にできることを考えてみよう。第一にやらなければならないのは、この状態で一生懸命がんばっていても、生き残り競争に陥るだけだということを理解することだろう。もちろんユニクロのように業界上位にいる人たちは、継続的な努力を重ねてさらによいサービスを目指すべきだ。しかし、それ以外の会社は「変わるために何をすべきか」を考えなければならない。なんとかなると思って情報を集めると「正常性バイアス」の影響を受けてしまう。でも、やっぱりダメなものはダメなのだ。

オープンイノベーションに必要なミツバチ

生態系を作るにあたっては、ミツバチのような存在が非常に重要だ。イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材に出てくる概念だが、別々のところにあるアイディアをつなぎ合わせる働きをするからだ。こういった意味で、アパレル関連のジャーナリストは、メーカーが作ったものを消費者に紹介するだけではだめだろう。アパレルからアパレルへ、外国の都市の流行を地方のジーンズ産地へといった具合に情報の媒介をしなければならない。もちろんこうした目標のためにTwitterを使ってもいいのだが、対応する人材や、Twitter上のアイディアを形にするヒトが必要になる。こういった生態系は、今日作って、明日からばんばんイノベーションが形になるというわけではない。しかし、生態系を作るプラットフォーム作りに必要なコストはかなり低くなっている。もっともそれも「デフレ」の影響なのだか。

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