マネジメントにおいて統制とモチベーションのバランスは大きな課題だ。健康な組織ではこれら2つが非公式なルートでうまく調整されている。

民主党はかなり明快な思想を持った政党だ。一貫してブレがない。それは彼らには政策がなく、アイディアそのものは国民や官僚から持ってこようとしているところだ。株価が下がり、円が高騰しているとき、菅直人総理は関係閣僚を呼び対応策を話しあった。多分、何もアイディアが出なかったのだろう。「引き続き注意深く見守る」ということになった。一時は株価が上がりかけていたのだが「なんじゃそれ」となった市場は再び下がりはじめたのだそうだ。ここでも民主党はブレのない姿勢を見せた。私たちにはアイディアはありません、と宣言したわけだ。

前回までの「個を活かす企業」は、どちらかといえばボトムアップ型の提案が組織に活力を与えるというモデルだった。マネジメント層は、そうした目標をストレッチし、必要なサポートを与え、この個人の提案を全体レベルで調整する。人間は自分の立てた目標を重要と考え、それに向けて他人を巻き込み、達成することに喜びを感じる。自分の立てた目標に協力したり、話を聞いてくれる人の事も好きだ。自分たちで立てた目標は、こうした人たちにやる気を与えるのである。

民主党はそういう組織を指向しているようだ。ではなぜアイディアが上がってこないのか。それは彼らが実際には別の行動原理で動いているからである。それが「統制」だ。統制型組織では、自分たちのやりたいことを諦めて組織に尽くすというやり方が取られる。自分からはアイディアを出さない。機会を外に求めないことを誓約した上で「安定に寄与する」というやり方である。理論的にはアイディアは上層部からやってくることになっている。実際は中層階で作られたアイディアが非公式のルートで上奏され、最終的に公布されることになっている。つまり、統制型の組織でも完全に統制されているとは限らないのである。

ここでは「統制」と「モチベーション」という二つの軸を見ることができる。統制型の極端な例では、下に行けば行く程自分で考えない。自分で選択する事を諦める代償として安定や給与が保証されるのだ。モチベーション側の極端な例では、いわゆる「自己責任」と呼ばれる状態だ。安定側の例で、物事がうまく行かなくなると現場には現実を無視した指令が日常的に送られる。かなり苦痛な状態だ。これを「自分たちが立案しているわけではないから」といいつつ耐え忍ぶ。さらにこれが進むと「自分を殺して」何も考えないようにする。

どうやら官僚組織を見ていると、統制がストレスになったまま組織が放置されると「自分たちで自分たちの存在意義を確保しよう」と考えるようだ。「存在意義」は、自らの役割を定義し、行動目標を立て、その結果を通して自信を深めることによって生まれる。これが崩れると与えられた環境の中でなんとかしてこのサイクルを作り出そうとするのだ。しかし、本来のサイクルは既に麻痺している。すると上に有用なアイディアが上がらなくなる。

民主党の状況から我々が学べるのは、組織が縮小するときには2つの異なった「マネジメント方式」がお互いにアクセルとブレーキの役割を果たすということだ。一つは統制だ。「官僚組織は自分たちの利権を確保するために、天下り先を準備している」のだから、それを禁止しなければならない。この統制によるアプローチがうまく行かないのは、現状を見ればあきらかだ。

一方「モチベーション型」のアプローチももはやうまく行かないだろう。彼らは過去の経験から防衛的になっており、提案することはどれも自分たちの利権確保につながるようなものばかりだ。つまり自己保身が行動のモチベーションになっているわけだ。加えて予算枠は限られている。人は希少なリソースを確保しようとするわけだから、理性的な反応は望めないだろう。

一人の組織に対して「インセンティブ」(つまり統制型)のコントロールと、モチベーション型のコントロールを併用するのはなかなか難しい。人が自発的に行動するように強制する事はできないからだ。つまり、変革にはプロセスデザインが必要なのである。

しっかりした目標を持ち、文化を再定義することが必要だ。もしかしたら組織文化を再編成するためには、いったん今ある官僚組織をバラバラにする「リストラクチャ」が必要かもしれない。しかしこのリストラクチャリングが1年に1度起こるような事態も避けたい。また、リストラクチャが、よい組織とやりがいがあるシゴトを作るのだという約束を官僚に信じ込ませる必要もある。つまるところは、まず「国民の信頼」と「国家ビジョン」を得ることが必要だというところに落ち着いてしまうのだ。

まずは自らの延命に奔走する民主党のリーダーが、9月の代表戦に向けて、なぜ信頼とビジョンが重要か理解していることを祈りたい。信頼とビジョンは選挙のために見栄えのいいマニフェストを書くための方便ではない。

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